はじめに
AIエージェントに調査と提案を任せる——ここまでは前向きに進められます。ですが「その提案をAIが自動で実行していいか」となると、話は別です。AIが勝手にサイトや設定を書き換え始めたら、怖くて夜も眠れません。
そこで採用したのがヒューマンインザループ、つまり「人が輪の中に入る」設計です。AIの提案は、人がレビューして承認して初めて実行される。この記事では、その承認フローと、Slackを使った質問応答の仕組みを解説します。
なぜ人のレビューが必須なのか
AIに実行まで任せない理由
AIの提案は便利ですが、完璧ではありません。データの読み違い、文脈の欠落、季節要因の見落とし——人間なら「それは違う」と分かることを、堂々と提案してくることがあります。
的外れな提案がそのまま反映され、サイトや設定が意図せず変わる。問題に気づくのは影響が出た後で、原因の切り分けも難しい。
おかしな提案は承認段階で止められる。実行されるのは人が納得したものだけなので、変更の理由と責任が常に明確。
AIの実行力は魅力的ですが、業務では「速さ」より「間違えないこと」が優先されます。人のレビューを挟むわずかな手間は、安心して自動化を続けるための必要経費なんです。
「提案」と「実行」を分ける設計
このシステムでは、エージェントの権限を提案の登録までに限定しています。サイトの変更や設定の書き換えといった実行系の操作は、エージェントには一切許可していません。
AIに実行権限を渡さない
エージェントができるのは「業務ハブのAPIに提案を登録すること」だけ。実行に必要な権限は人間の側に置く。この権限の分離が、ヒューマンインザループを形だけにしないための土台です。
提案と実行を仕組みとして分離しておけば、たとえエージェントが暴走しても、影響は「変な提案が登録される」ところで止まります。
却下も立派な意思決定
承認フローというと承認ばかりに目が行きますが、却下も同じくらい重要です。
却下された提案は、理由とともに記録します。「これは季節要因なので対応不要」「すでに別施策で対応済み」といった却下理由は、エージェントの精度を見直す貴重な材料になります。人間の判断を蓄積していくことで、どんな提案が刺さり、どんな提案が外れるのかが見えてくるんです。
承認フローの実際
提案のライフサイクル
登録された提案は、いくつかの状態を移り変わりながら処理されます。
エージェントが提案を業務ハブに登録(ステータス: 未レビュー)
Slackに新着提案を通知
管理者が管理画面で内容と根拠を確認
承認なら実行フェーズへ、却下なら理由とともに記録
承認された提案を人が実行し、結果を残す
各提案がいまどの状態にあるかを管理画面で一覧できるので、「見落とし」や「二重対応」が起きにくくなっています。
管理画面での判断材料
管理者が承認・却下を判断するには、判断材料が揃っている必要があります。
とくに根拠データが効きます。数値の裏付けがあるからこそ、「たしかにこれは対応すべきだ」と自信を持って承認できるわけです。
Slackを使った非同期の対話
通知から承認への動線
管理画面を毎日開くのは、正直なところ長続きしません。そこで、Slackを起点にした動線を用意しました。
新着提案はSlackに通知され、担当者は朝のSlackチェックのついでに気づけます。通知には提案の要点が含まれ、詳しく見たいときだけ管理画面へ飛べばいい。「わざわざ見に行く」を「流れてくる」に変えるだけで、レビューの定着率が大きく変わりました。
エージェントからの質問応答フロー
このシステムで気に入っているのが、エージェントが人間に質問できる仕組みです。
調査中に判断がつかないことをSlackで質問(例: この落ち込みはセール終了の影響か?)
手が空いたときにSlackで返信すればよい
得られた文脈を次回以降の調査に活かす
人間にしか分からない背景(社内の事情、直近のキャンペーン、店舗の状況など)をエージェントが補えるようになり、提案の的中率が上がります。しかも非同期なので、人間は自分のペースで答えればいい。この気軽さが継続のコツです。
通知疲れを防ぐ設計
便利な通知も、多すぎれば無視されます。いわゆる「狼少年」状態です。
通知は質で勝負する
1日に届く提案の件数に上限を設け、優先度の低い気づきは通知せず記録だけにとどめる。「Slackに流れてくるものは読む価値がある」という信頼を守ることが、システムを生かし続ける鍵になります。
通知の設計は技術というより運用の知恵ですが、ヒューマンインザループを回し続けるうえで、承認フローそのものと同じくらい大切な要素だと感じています。
まとめ
提案→承認→実行のヒューマンインザループ設計を解説しました。
- 提案と実行の分離:AIに実行権限を渡さず、人の承認を必須にする
- 判断材料の提示:根拠データを添え、承認も却下も記録する
- Slackでの非同期対話:通知と質問応答で、無理なくレビューを回す
このフローに乗せる提案がどう作られるかは「複数データソースを横断する調査プロンプト設計」で、エージェント全体の仕組みは「毎朝自動で動くAI調査エージェント」のハブ記事で解説しています。