はじめに
AI調査エージェントの品質を決めるのは、実はコードよりもプロンプトです。「データを見ていい感じに提案して」とだけ頼むと、日によって着眼点がバラバラだったり、当たり前のことしか言わなかったりします。
この記事では、アクセス解析・検索データ・店舗売上・EC・CRMという性質の異なるデータを1つの調査にまとめるために、どうプロンプトを設計し、どうデータを受け渡しているかを解説します。
調査観点をプロンプトで固定する
なぜ観点を固定するのか
エージェントに毎日自由に調査させると、ある日は流入だけ、別の日は在庫だけ、と見る場所が揺れます。これでは「昨日と比べてどうか」という定点観測が成り立ちません。
そこで、見るべき観点をプロンプトにあらかじめ書き込みます。「各データソースについて、前週比・前月比の変化を確認する」「異常な増減があれば必ず数値の根拠とともに報告する」といった具合です。観点を固定することで、エージェントの出力が毎日同じ土俵に乗り、変化を比較できるようになるんです。
観点リストの具体例
実際には、データソースごとに「何を、どの粒度で見るか」を明文化しています。
この観点リストがあることで、エージェントは「今日は何を見ればいいか」に迷わず、毎回同じ深さで調査できます。
「気づき」の質を上げる指示
観点を固定するだけでなく、提案の質を上げる指示も欠かせません。
当たり前を禁じる一文が効く
「一般論やベストプラクティスの繰り返しは提案しない。必ずこのアカウントの実データの変化を根拠にすること」という制約を入れると、提案が具体的になります。AIは放っておくと教科書的な回答をしがちなので、それを封じる一文が効いてきます。
「確信が持てない場合は提案せず、質問として残す」という指示も入れています。無理に埋めさせないことが、提案全体の信頼性につながります。
データをエージェントに渡す設計
各データソースの取得方法
観点が決まっても、肝心のデータをエージェントの手元に届けなければ調査は始まりません。データソースごとに取得方法は異なります。
GA4・Search Console・Shopify・HubSpotは、それぞれのAPIから当日必要な範囲を取得
店舗売上CSVは、ローカルフォルダに置かれた最新ファイルを直接読み込み
事業の背景や商品カテゴリの説明など、判断に必要な前提もプロンプトに含める
揃ったデータをもとにエージェントが横断分析
ローカルPCで動かしているからこそ、CSVのようなファイルもAPIデータも同じ土俵で扱えます。
トークンを浪費しない渡し方
すべての生データをそのままエージェントに流し込むと、あっという間に処理できる情報量の上限(トークン)を食い尽くします。
そこで、渡す前に要約・集計するひと工夫を入れています。たとえばGA4なら、全ページの明細ではなく上位ページと主要指標に絞る。CSVなら、行データそのものではなくカテゴリ別に集計した数字を渡す。エージェントに「生データを解釈させる」のではなく「集計済みの数字から示唆を出させる」ほうが、精度もコストも良くなるんです。
横断分析を促す文脈づくり
このエージェントの真価は、データソースをまたいだ推論にあります。それを引き出すには、各データを別々に渡すのではなく、関連づけて解釈するよう促す必要があります。
「検索流入・サイト内行動・受注・問い合わせを一連の顧客導線として捉え、どこにボトルネックがあるかを推論せよ」といった指示を添えると、エージェントは「流入は増えたのに受注は伸びていない、カート付近に課題がありそう」といった横断的な示唆を出してくれます。
提案を構造化して受け取る
出力スキーマの設計
エージェントの調査結果は、自由文ではなく決まったスキーマで受け取ります。形式が揃っていないと、業務ハブ側でうまく扱えないからです。
とくに evidence(根拠)を必須にしているのがポイントで、「なぜそう言えるのか」をデータで示せない提案は、そもそも出させません。
根拠データを必ず添えさせる
RAGの設計と同じで、ここでも大事なのは根拠を示せることです。
「タイトルを見直しましょう」だけの提案は、受け取った人が判断できません。「このクエリの掲載順位が3位から8位に下落し、クリック率も下がっている」という根拠がセットで初めて、承認するかどうかを人が判断できます。根拠の明示は、後段の承認フローを機能させるための前提条件なんです。
一貫した形式がもたらす運用の楽さ
出力形式を固定しておくと、業務ハブ側での扱いが劇的に楽になります。
提案を優先度で並べ替えたり、カテゴリで絞り込んだり、根拠データを折りたたんで表示したり——形式が揃っているからこそ、こうしたUIが素直に作れます。プロンプト側で構造を決めておく投資が、運用フェーズでずっと効いてくるわけです。
まとめ
複数データソースを横断する調査プロンプトの設計を解説しました。
- 調査観点の固定:定点観測を成立させ、当たり前の提案を封じる
- データの渡し方:要約・集計してトークンを節約し、横断分析を促す
- 出力の構造化:スキーマと根拠を必須にし、承認フローにつなげる
ここで作った提案を人がどうレビューし実行に移すかは「提案→承認→実行のヒューマンインザループ設計」で、そもそもエージェントをどう起動しているかは「AIエージェントを毎朝定時起動する仕組み」で解説しています。