はじめに
海外ブランドの商品を扱うECサイトでは、「在庫はあるのに、どこにあるかで納期が全然違う」という事情がつきものです。日本の倉庫にあればすぐ発送できますが、海外の倉庫からの取り寄せなら数週間かかる。この違いをサイト上で伝えられていないと、注文後に「思ったより届くのが遅い」という不満やキャンセルにつながってしまいます。
この記事では、日本倉庫と海外倉庫の在庫を別々に管理し、ユーザーに適切な納期を表示する仕組みを解説します。在庫の持ち方と見せ方を整えるだけで、問い合わせとキャンセルが減らせるという話です。
複数倉庫を使う理由
すべてを日本に在庫するのは現実的ではない
海外ブランドの商品は種類が多く、すべての在庫を日本に置こうとすると倉庫のコストが膨らみます。よく売れる商品は日本倉庫に置き、それ以外は海外倉庫(ブランドの本国側)から取り寄せる。この使い分けが、コストと品揃えのバランスとしては現実的です。
「売り切れ」ではなく「取り寄せ可能」として売る
海外倉庫にしか在庫がない商品も、納期さえ伝われば販売できます。日本在庫が切れた瞬間に「売り切れ」と表示してしまうのはもったいなくて、「お取り寄せ・約○週間」と示せば、待てるユーザーには買ってもらえるんですよね。複数倉庫の管理は、販売機会を増やすための仕組みでもあります。
在庫の状態と納期の見せ方
表を一言でまとめると、「在庫がどこにあるか」で納期の表示を3パターンに分けています。
商品ページでの表示
商品ページでは、在庫状況に応じて異なるメッセージを出し分けます。日本在庫があれば「即納可能」、海外在庫のみなら「お届けまで約○週間」、どちらもなければ「在庫切れ・入荷通知を受け取る」。購入前に納期がはっきり分かるので、ユーザーの期待と実際のズレを防げます。
サイズ・カラーごとの出し分け
商品にはサイズやカラーといったバリエーションがあり、在庫の状況はバリエーション単位で違います。「Mサイズのブラックは日本在庫あり、Lサイズのブラックは海外取り寄せ」という細かさで表示を切り替えられるように、在庫データもバリエーションごとに倉庫別で持たせています。
在庫データの取得と判定
ロケーションIDで倉庫を区別する
Shopifyでは、倉庫や店舗などの在庫の置き場所を「ロケーション」として登録でき、それぞれにロケーションID(置き場所を区別する番号)が振られます。Admin API(管理側のデータを操作するための窓口)を使ってロケーション別の在庫数を取得し、「日本在庫」「海外在庫」というサイト側で扱いやすい形に変換しています。
判定の流れ
在庫タイプの判定はシンプルで、まず日本倉庫の在庫数を見て、あれば「即納可能」。なければ海外倉庫を見て、あれば「取り寄せ」、どちらもなければ「在庫なし」。この順番で確認していくだけです。
図を一言でまとめると、「日本→海外の順で在庫を確認し、最初に見つかった場所に応じた納期を表示する」流れです。
取り寄せ注文への対応
納期を目立つ位置に明記する
海外在庫のみの商品は、「カートに追加」ボタンの近くに、取り寄せ商品であることと納期の目安を明記しています。注文の直前に必ず目に入る位置に置くのがポイントで、ここを見落とされると「すぐ届くと思っていた」という行き違いが起きてしまいます。表示の位置と文言だけの工夫ですが、効果は大きい部分です。
注文後の流れ
取り寄せ注文を受けたら、海外倉庫から日本への発送を手配し、日本に届いてからユーザーへ発送します。経路が1段増えるぶん時間がかかることを、商品ページと注文確認の両方で事前に伝えておくことで、配送に関する問い合わせを減らせています。
導入するときに注意したい点
在庫表示の鮮度とのバランス
在庫数は注文のたびに変わるため、商品ページの表示をどれくらいの頻度で最新化するかは設計のしどころです。ページ全体を作り置きして高速に配信しつつ、在庫と納期の部分だけはこまめに確認する、という組み合わせにすると、表示速度を保ったまま「即納と書いてあったのに在庫がなかった」という食い違いを減らせます。
倉庫間の在庫移動も反映される形に
売れ筋の変化に合わせて、海外倉庫から日本倉庫へ在庫を補充することがあります。このときShopify側でロケーション間の在庫を付け替えれば、サイトの表示は「取り寄せ」から「即納可能」へ自動で切り替わります。表示の切り替えのために手作業が要らない、という状態にしておくことが、複数倉庫運用を続けるうえでの前提条件になります。
運用して分かったメリット
在庫コストの削減
全商品を日本に置く必要がないため、倉庫コストを抑えられます。売れ筋だけを日本在庫にして、それ以外は取り寄せで対応する形です。
品揃えの拡大
海外在庫も販売対象にできるので、ユーザーに提供できる商品数が増えます。「在庫を持たずに品揃えを広げる」ことが、仕組みとして成立します。
問い合わせとキャンセルの減少
在庫状況と納期を購入前に明示することで、「いつ届くのか」という問い合わせと、納期理由のキャンセルが減りました。期待のコントロールは、表示の設計でかなりの部分を解決できます。
まとめ
複数倉庫の在庫管理は、在庫コストの削減と品揃えの拡大を両立させる仕組みです。ロケーション別の在庫データをそのまま見せるのではなく、「即納・取り寄せ・在庫なし」というユーザーに意味の伝わる形に変換して表示する。この変換の設計が、複数倉庫運用の要になります。